<注意>
かなり前に連載として書いていたロイアイのパロディーです。
覚えてる奇特な方は、ドウゾ読んで上げてください。
知らないけど読んでも良いよって言う仏みたいな方は、カテゴリー連載02の第一話からお願いします☆
痛みの理由を知る事で
誰かを分かったつもりになる
そんな人間が一番嫌いだった。
辛さを分かち合うことは
何の解決にもならないと
ずっと、そう思ってきた。
けれど、この想いは何だろう?
全てが知りたい。
足掻いてみたい。
貴方を取り戻すため。
醜い、自己満足・・・・
それでも良いかと、思えてしまった。
貴方の全てを、求めるから。
【My dear Wingless :05】
何かを伝えようとしては、口を閉ざす。
その様な状態が続いていた。
語り始めた彼から、平素の饒舌さは微塵も感じられない。
迷い、戸惑い。
今ようやく、過去の出来事を頭で整理しようとしている――――彼の姿は、それを語っていた。
重苦しい暗黙の帳。そこから先にあるものは決して甘い蜜ではないはずだろうに・・・私はどうしてそれを求めずにはいられないのだろう。
「中佐が私におっしゃったのですが―――」
「え?ヒューズ?」
彼が話しやすいように、きっかけになるような言葉を捜していた私は、何日か前のその台詞を思い出した。
直接尋ねればいい―――中佐は、そう言ってこの言葉を私に投げかけたはずだ。
「貴方は、過去に囚われていると」
「・・・・・そうか」
そのまま、静寂が辺りを包む。先程まで遠くで聞こえていた兵士たちの笑い声も、馬の嘶きも消えてしまった。
風も無い、恐ろしいほど静かな夜。時折聞こえる足音が、近づいてはまた遠くなる。
長い沈黙の後、彼は諦めたように呟いた。
「8年前の、公会堂爆破事件を覚えているか?」
「・・・8年前――――」
私は急いで記憶の断片を拾い集める。
平和と発展を謳うこの国の治安の揺らぎは、驚くほど大きい。
全土、大小を合わせ、幾つもの事件が私の意識へと名乗りを上げてきた。
その中で思い当たるものは――――当時まだ23歳の若い兵士が、20人近いテロリスト犯を一人で始末したということで、話題を攫った事件。
「・・・右翼勢力が、軍部の権利縮小と国王への政権復古を掲げて起こした事件―――貴方が、たった一人で解決なさった事件だと聞いております。」
「解決か・・・聞こえは良いな」
「間違ってはおりませんでしょう?地区管轄の軍人が現場に到着した時には既に、犯人は始末されていたのですから」
「・・・・人質が一人死んだんだ。」
「しかし、それは貴方の所為ではありません。確かに救えた可能性もあったということは否めませんが、他の人質は助かり被害は最小限だったはずです。誰も皆、貴方の功績を認めこそすれ非難してはおりません。その事を気に病んでおられるなら、もう―――」
「それは事件の全てではないよ、中尉」
遮るように、彼は言葉を挟んだ。しかしそれきり、後には続かない。
寄る辺ないランプの光さえも恐れるかのように、彼は机の上に置かれた自分の指に―――片方きりになってしまった手に視線を落としたまま。
静寂の中で、ランプの燃える微かな音が耳につく。
焦らすようなその二度目の沈黙に耐えかね、私は声を上げた。
「・・・・どういうことです?大佐」
私の問いに答えるように上げられた彼の視線は、痛いほどに私を穿つ。
痛々しいほどに影を抱えた眸が、私の心を抉っていく。
私が口を開こうとしたその時、彼は呟いた。
余りにもざらつき、掠れるその声で。
「私が殺したんだ。人質だった、私の婚約者を」
何を言えばいいのだろう。
不思議と、驚きは小さかった。
ただ、苦しさが心を占め行く。
私が知りたかったこと、それは、こんなことだったのだろうか。
「その日は、とても暑い日だった。残暑と呼ぶに最も相応しいような、蒸し暑くて・・・嫌な夜だった。私はその公会堂にコンサートを聞きに来ていたんだ―――彼女と一緒にね」
彼の声は耳鳴りのように、耳底で反響して私の意識を覆った。
「行き成り会場を占拠したテロリストは、訓練された奴らだった。私は一人でも多く民間人を外へと逃がすように努めたが、私を含め数人の人質を取られてしまった。その中には、私の恋人もいた」
何が、こんなに苦しいのだろう。
私が彼を慰める言葉を持たないこと?
彼に婚約者がいたこと?
違う――――そうじゃない。
「逃げる事を、彼女を助ける事を後回しにしたんだ。民間人を助けなければ、そう思った。彼女だって、ただのか弱い女性だったのに・・・・無意識のうちに、彼女は軍人の女だから、と・・・」
彼は私を通して、誰かを映している。誰かを、求めている。
贖罪を、私に見出した、誰かに。
そこに私のはいる余地など無いというかのように、拒絶する、双眸。
そのことが、こんなにも―――-。
「彼女に自分と同じ軍人としての条理を押し付けてしまっていた・・・・逃げればよかったのに。彼女の手を取って、誰よりも先に外へ。けれども私はそうしなかった。自分の力だけでは抱えきれない正義を振りかざして、作戦などなく、ただ闇雲に戦って。そうして向けられた凶弾から私を庇って、彼女は死んだ。片腕も、その時に失った」
彼はゆっくりと私に向かって言葉を紡ぐ。
そして、贖い様が無い過去を差し出す。
私を試しているかのようだ。
彼の眼差しが私へと還る。そして、問いかける。
これでもまだ、私を過去から連れ戻せる自信があるのか―――と・・・。
「これは私の罪だ。これまでも・・・・これからも、無くした片腕は、だからつけることは無い。彼女の為に、私はこうやって償い、生きていく」
彼は私に微笑みかける。もう諦めろというサイン。
私は、大きく息を吸った。
「・・・・貴方は、自分が可愛いのだわ」
「・・・・え?」
分からない、と彼の視線は揺らめく。
「片腕をつけたからといって、貴方は過去から逃げられるのですか?過去を忘れられるのですか?」
「それは・・・・」
「そうやって自分に、他人に、自分の科された犠牲を曝け出す事で償えている気分になっているだけじゃない。腕の無い不自由を強いて自分の危険を増したからって、それが一体何になるというのです?自分があの事件の状態から変わってしまったとしても彼女を想って生きていくことが、それ位強くあることが、本当の償いになるのではないのですか?」
思いもよらない台詞だったのか、彼は私の顔を見つめたまま、開きかけた口を閉ざしてしまった。
「貴方の婚約者はもう居ないんです。償いとか、罰とか・・・それはもう貴方だけの問題だわ。彼女はそんなことで喜ばないし戻ってもこない。貴方が自分で自分を危険に晒すことは、彼女が命がけで守ってくれた想いを踏みにじることなのだと分からないのですか?」
私の言っている事は、上司に向かって途轍もない暴言だ。傷付いている人間に向かって言う言葉ではない。
それでも、とめることは出来なかった。
きっと、彼に過去から踏み出して欲しかったのだ。
どんな形でもいい。醜くても、踏み出せるのなら。
それ程にまで彼に振り向いて欲しかったのだ。
「まして、腕の一本や二本で終わりになる罰なら、そんなに弱い想いなら、いっそ忘れてもらった方が彼女も清々するわよ・・・っ!」
悔しいのか、悲しいのか。
頬を伝う涙は音もなく零れるばかりで、自分の感情の機微までは教えてはくれなかった。
吐き捨てるように言い放ち、彼の顔を見ることもなく自分の天蓋に駆け戻った。
恐らく、この戦いが一段落すれば職を解かれる事になるだろう。私的なこととはいえ上司にたてついたのだ。
――――それでも、彼の側に居るよりは良い。
肩を震わせ、硬い簡易ベットに顔を押し付けるようにして私は泣いた。
もうすぐ、戦いが始まろうとしていた。
・・・・はい、何かよく分からない事になってきました。
次は少しはイチャコラさせたいのですが、場面は戦場・・・どうしよう;
少しくらいだったら良いかな・・・(オイっ